服の裾から榎木津の手が入ってきて私の肌を直に撫でてゆく。背中を撫でられるのが気持ち良い。熱い息が唇から漏れ出る。

「やっぱり関は鳴いている声が良いな。聴きごたえがあって」

 その為だけにいつも酷い目に遭わされる私はたまったものではないのだが。
 そんな事を考えているうちに、私の息遣いは後戻りが出来ないほど激しいものになっていた。私のズボンは既に腰より下にずり落ちている。
 榎木津の名を呼んだ。すると榎木津は、どうした? と云わんばかりに、私の首筋を嬲っていた舌の動きを止めて、私の顔を覗きこむ。

「――このまま、立ったままなのかい」

「関はそっちの方が良いのか? 僕と会わないうちに随分、能動的な体位を好むようになったんだな」

 榎木津は笑って云った。冗談なのだ。私に良いも嫌も無いのだが、そう訊かれれば、否定する。

「違うよ。いや、それもあるけど――このままだったら、誰か来たら」

 見られるどころか、鉢合わせみたいなものだ。入り口の目の前で行為に及んでいるのだから。

「ああ、そういえば」

 榎木津は興味無さそうにそう云いながら、私の下着に手を滑り込ませて、陰毛を擽るように撫でた。私は小さく息を飲んだ。榎木津のセーターの下から腕を潜り込ませて、榎木津の滑らかな背中を撫でていた手の動きも、止まってしまう。

「触っていい?」

 ん? と更に榎木津は私に問いかける。と訊かれても、もう既に手が入っているじゃないか…。

「榎さん、場所変えよ…」

「誰も来ない。益田は朝方帰ってくるし、何しろ、木場は当直だから和寅は明日の夕方だ。そんなに気になるなら外でしようか。もう日も落ちてるし、路地裏なら滅多なことじゃ見つからない」

「や、やぁだ…っ」

「やだろうな。大体関の、もう勃ってるから場所を変えるなんて悠長な事云ってられないだろ。ほら、吸ってあげよか…」

 囁きながら、榎木津は私の陰茎に手を添えた。裏筋を掻く。私は強い刺激に、腰を揺らして一旦息を呑み込み、吐き出した。声を出しながら、もっとして欲しいと榎木津の背中に爪を立てる。
 榎木津に引っ張られて、床に腰を落とした。そのまま榎木津が覆い被さり、左手は私の衣服をたくし上げ、右手は器用に陰茎を刺激してくる。
 話をはぐらかされたと分かっていながらも、刺激に逆らえない。
 榎木津に、吸って欲しいと思っていた。

「榎さん、早く――」

「せっかちだ。焦らしてあげよう」

 榎木津は下着からアッサリと手を抜くと、私の口を榎木津の口で塞ぎながら、両の手で乳首を摘んで転がしだした。
 堅くしこっていた乳首を、榎木津の指先が捻り潰すような動きを繰り返す。
 痛いのだか、気持ちいいのだか分からないが、体は断続的に痙攣を繰り返している。
 声を上げたいのに、榎木津の舌が、私の舌に絡み付いていて呻き声にしかならない。
 唾液が逆流して気管に入りそうになる。
 汗と粘液が至る所から噴き出している。
 私は薄い汗の臭い。榎木津は香水の匂い。
 榎木津のセーターを脱がせようと唇を塞がれながらも、手を動かす。
 私だけ、裸に剥かれるのは、割に合わないから。
 本当は榎木津を、素肌で抱き締めたいのだ。
 榎木津の背中を剥き出した所で、榎木津が私の腕の動きの意図に気が付いたようだ。私の唇を貪ったまま、セーターから両腕を抜き取って、首にセーターが引っ掛かる格好になる。
 榎木津は、一旦唇を離し、セーターを脱ぎさって後方に放った。
 すぐさま、また私は深く口付けられる。そして榎木津は私の長袖シャツを乱暴に脱がせた。一つボタンが弾け飛んだ。
 私は思う存分、肌が剥き出しになった両腕で榎木津を抱き締めようとする――が、何かが邪魔をして、その存在に気が付いた。――鳥口の所為で腕に巻かれた包帯。
 嫌だ、邪魔をしないで。私と榎木津の間に入るものは全て。許せない。鳥口が付けた傷などは。
 ――悔しくて、もどかしい。
 苛付いて、泣き出しそうになった。
 一瞬躊躇ってから、榎木津の背に回している腕を離して、唇を貪られたまま、自分の包帯を毟り取ろうと腕を引っ掻く。
 雪絵が丁寧に巻いてくれた事を思い出し、余計に邪魔になった。
 ほどけて、長く白い包帯が視界の隅を流れる。
 榎木津の瞼は開かれていて、私を面白そうにじっと見詰めている。上唇を軽く噛まれた。

「癇癪を起こすんじゃない――関。僕は此処にいるから、焦る必要ないよ。落ち着け」

 榎木津は笑いながら云った。無理だ。この状態で落ち着ける訳が無い。
 榎木津は、まだ腕に巻き残っていた包帯を解いてくれた。榎木津の手から、私の頭の脇に包帯が落ちた。腕は自由になった。
 それだけでも嬉しくて、榎木津に抱きついた。両腕に榎木津の素肌を感じる。するりと私の肌に馴染む肌。抱きついているだけで、充分気持ち良くて満足できるが――私は我侭だ。求めても良いと知ると、貪欲に欲しくなる。――下穿きが、先走りでべたべたになっている。やらしい思考が先行する。

「好きです――榎さ、ん――好きだ」

 覚え立ての言葉をぎこちなく繰り返す。榎木津からの刺激を追って腰を蠢かせながら。

「腰を擦り付けながら、いう台詞じゃないな。やらしい関」

 下穿きも、足元で絡んでいたズボンも、剥ぎ取られた。陰部が空気の冷たさに震える。

「榎さんの、触らせて、私に触らせて」

 私は哀願して、また榎木津に腰を摺り寄せていた。
 布地が陰部に擦れて、甘い感覚が微かに広がって止められない。榎木津は微笑を湛えながら、そんな私の下半身は放っておいて、胸から脇、脇腹や首筋を丹念に舐め尽くした。
 私の手は忙しなく、榎木津のズボンに伸びて、ベルトを外そうと闇雲に動き回る。
 ――ベルトが外れた。次はジッパーを。そう思ったら、榎木津は体を起こして、私の腕を取って立たせた。
 どうして、と思っていると軽く口付けられた。

「僕は良いけど、床は冷たいから風邪を引いてしまうぞ。ソファでしよう」

 私は二三歩、榎木津に誘導されて来客用ソファに腰掛けるやいなや、榎木津の腰に両腕を回し、顔を摺り寄せた。
 榎木津の堅くなった股間が頬に触れる。榎木津も興奮している事に、私の息が荒くなる。頭を撫でてくれる榎木津の手。

「こら。関、ちょっとは離れなさい。悪戯は駄目だ」

 離れたくないと見上げると、榎木津は身を屈め口付けられてそのまま、押し倒された。
 私の舌を貪るように、口の中の自由を長いこと奪ってから榎木津は、粘液の滲み出ている私の亀頭を、指先で撫で回した。

「あぁ――ん、あ」

「なんだかなぁ。カワイイなぁ。どうしようかな」

 霞がかった頭で榎木津の言葉を噛み締めていると、榎木津が私の足元に下がった。
 陰部を握られると、生暖かい息を感じて、舐め上げられた。
 仰け反ると、口に咥えられた。私はだらしのない善がり声をあげていた。
 吸い付いて、舐めあげられ、揉まれ、扱かれて、私は簡単に追い上げられた。
 泣いて、これ以上は無理だと嫌々をするように首を振り、榎木津の髪の毛の間に差し込んだ手に力を籠める。

「――何で嫌なんだ? さっきやって欲しがってたじゃないか。こうされるのが、大好きな癖に」

 榎木津は嚢を揉みしだきながら、カリに軽く歯を立て、それから舌でチロチロと舐めだした。
 早く射精したいと腰が揺れる。
 意味もなく涙を垂れ流して涎を垂れ流して、体を硬直させる。限界が、すぐ傍まで近づいている。
 私一人で、そこにいくのか? 
 切れ切れに榎木津の名を呼んでも、榎木津は止めてくれない。
 更に榎木津の舌使いは激しくなる。
 私は女みたいに喘いで、悲鳴を上げて、榎木津の背中に爪を立て、榎木津の頭に置いた手には一層力が籠った。
 一度、強く亀頭を吸い上げて、榎木津は股間から顔を上げた。
 私はもう達する寸前だったのだ。苦しくて、もどかしさに泣き声をあげて、榎木津の唾液と自分の体液でドロドロになった陰茎を掴んだ。私の背後に回った榎木津の手が、私の手の上に重なった。榎木津の手が私の手を上下に動かすように誘導する。
 私は自分の陰部と手と、その上に被さっている榎木津の手の動きを、性欲の籠った目線でじっと見詰める。
 最初は上下にゆっくりだった榎木津の手と私の手の動きが、だんだんと早さを増す。
 動きに合せるように息遣いが、早くなる。
 自分の掌で、固くドロドロにぬめった陰部を掴んでいる感触。
 動きは榎木津に支配されている。
 支配している榎木津は、私の肩に頭を置いて黙ってその様子を見ている。私の掌なのに、私のものではない感じ。手淫を人に見られている恥ずかしさ。しかも榎木津に。それを考えたら、また尿道から先走りが零れた。

「いっぱい出てるよ? 白いのも、沢山出てる。僕が突付いたらもうイクんじゃないか? 実験…」

 榎木津の左手の人差し指と中指と親指が、私の亀頭を摘むように強く、三本の指先で擦った。

「ひぃ…!」

 途端に痙攣が起こり、体が硬化した。
 息が詰まって目の前が白くなり、尿道口から幾億の精子が飛び出た。背が仰け反る。
 それでも榎木津の私の掌を操る動きは止まらず、私は何度か自分の手で、射精し敏感になった陰茎を強く擦った。
 更に極まった悲鳴が喉の奥から出て、自分でその声を聴いた。
 私は体を支えている事が出来なくて、前に崩れ、達した余韻にのたうちまわった。体が尚も痙攣し、精液もそれに合せて出続けている。
 自分の激しい息遣いが煩い。

「関、大丈夫か。呼吸困難で意識を飛ばすなよ」

「――っ…あっ…は…ぁ」

 榎木津の腕が欲しい。

「――えのさ――だき、しめて」

 榎木津に手を伸ばすと、すぐに私の手を取り、抱しめてくれた。
 榎木津の暖かい体が私を包んでくれる。
 腕の中で数度、痙攣を繰り返す。私の陰茎から、だらだらと雫の様に零れた精液が、榎木津のズボンに付いてしまうな、とぼんやり考えながら、榎木津の腕の甘さを貪って、呼吸を整える。榎木津の膝の上に座って、巫山戯て与えられた榎木津の指先を甘噛みする。
 私は一度達すると、どうしようもなく敏感になって痙攣が起こるが、それから直ぐに感覚が酷く鈍磨し、半刻は使い物にならない体質だった。それは相手が誰であろうと変わらない。
 私の体質を良く知っている榎木津は、少しの間は黙って抱しめてくれていたが、そのうち悪戯心を起こしたのか、榎木津の膝の上で身動きしない私の尻を指先でなぞり出した。私はその手を、掴んで止めた。逆に榎木津に手を掴み返され、私の掌に口付ける。

「榎さん――まだ駄目だよ。後、二十分ぐらい経たないと、感覚が元に戻りそうに無いんだ」

 これは冗談かっていうほど、体がだるいのだ、

「だって、関ばっかりずるいぞ。僕だってやりたいんだ」

 確かに、今日の榎木津は私の要求を訊き通しかもしれない。

「久し振りだから、関の自由にさせてたんだ。あーあ、僕は神だっていうのに、なんだってあんな我慢なんか…。関が泣くなんていつもの事だから気にしないでいきなり犯せばよかった。関が悶えているのを只見ているだけだなんて、いかにも神らしくなかった。僕は今すぐやりたいぞ!」

 私を力一杯抱しめながら、耳元で好き放題榎木津は云った。苦しいし煩い。しかし確かに今日の榎木津は優しいし、何より無理を強いらなかった。――。

「あ、今。ヤラシイ事を考えたな。まあ、そうだな。関が僕に十分間ぐらい奉仕して、それから残りの十分を、関のアナの拡張に使えば丁度良い感じだな。関の感度が完全に戻った頃には無事挿入だ」

 考えた事がばれたと思ったら、榎木津は嬉しそうに卑猥な言葉を並べ立て、なぁ、と訊いてきた。

「そ、そうですね…」

「大体な、関。今日僕はヤルつもりなんてコレッポッチも無かったんだぞ。本当に酒でも呑んで歌でも歌って馬鹿騒ぎするつもりだったんだ。関が最初に誘ったんだからな。その責任はしっかりとってもらうぞ? 僕が満足するまで、止めてって泣いても絶対止めてやらないから。覚悟するんだな」

 ――私だって、榎木津が満足しないうちは…。私だって――。

「そんなこと――最初から覚悟してて、誘ったんだよ…」

 幼い日に抱いた恋心と、老成した情欲がごった煮になって、私の肚の中を焼いている。榎木津の心に惚れ、体に欲情した結果がこれだ。
 混沌を更に榎木津に掻き回して欲しいという、淫らで身勝手な欲望は、一体何処から来たのか…。多分、榎木津でなければこんなにも想わない。誰も、こんなに想ったことは無い。雪絵でさえ。
 榎木津の腕に頬を摺り寄せる。私の髪の毛をひっぱって遊ぶ榎木津。
 そのうち、榎木津が囁いた。

「休憩は終了だ」

 私は榎木津の腕の中で体を背後へ向けた。榎木津が微笑んでいた。
 なんなのだろう、この微笑の力は。私には、物凄い拘束力だ。
 見蕩れていると、乱暴な動作で頬に音を立てて口付けられた。親が子供にするような、挨拶のような。それで私は我に返って、榎木津の膝から下りた。
 榎木津は両腕を頭の後ろで組んで、ソファの背凭れに体重を預け、脚を開き気味にして、じっと私を見詰めた。
 私はその視線に導かれて、ソファから降りて、両膝を床に着くと、榎木津の脚の間に跪く形になった。床の冷たさと寒さで、体が小刻みに震える。と、顔に柔らかいものが投げつけられた。
 ――私が先程包まっていた毛布だ。

「それでも、被っとけ。関は軟弱だから」

 視力が弱い癖に、榎木津は目敏いのだ。何だか嬉しくて、小さな声で有り難うと云いながら、榎木津が投げつけてくれた毛布を自分の肩にかけると、ソファに肘をついた。そろそろと榎木津の股間に手を伸ばす。
 榎木津の股間は、時間が経ってしまったのでさっき程ではないけれども、それでも充分膨らんでいて、主張している。
 ――触りたくて堪らなかった、榎木津のもの。もう今度は怒られない。
 私は榎木津のズボンのジッパーを少し焦ったような手付きで下ろして、下着から榎木津の陰部を取り出し易いように、少しズボンをずりさげるのにウェスト部分に手を掛けると、榎木津が腰を浮かしてくれた。
 頭上で、微かに榎木津の笑っている声がする。

「関君、手際が悪いねぇ。僕が出す」

 笑い声を含みながら、榎木津が云うと、自分で陰部を出してくれた。
 手間が省けたが――私がしたかった。
 そんな事を思いながら、榎木津の怒張した陰部に、唇を付けた。一度舌で軽く表面を撫でてから、深く咥えた。歯で傷付けてしまわないように、注意しながらゆっくり上下運動をする。榎木津が私にしてくれたように、嚢を揉みながら。小さく呻き声が聴こえた。

「…さある。もしかして巧くなったか? 昔より巧いぞ――鳥ちゃんにそんな事ばかりしてあげてたのか」

 そんな事は無い。鳥口になど、一度もこんなことはやらなかった。巧くなっているとしたら、それは私が必死だからだ。私は自分が閨事に長けていないのを知っているから、只一生懸命なだけである。榎木津に首を振るも、頷き返すも出来ない。
 唾液が次から次へと溢れて、榎木津の一物を汚す。上下運動をすると、唇と陰茎の間から唾液が漏れ出て、なんとも卑猥な音を立てる。一定の間隔で、その音を聞いていると、体の奥がむず痒く感じられた。

「なぁ――サル。どうなんだ?! 気になるんだが!」
 顔を榎木津の両手で挟まれて、強制的に榎木津は私の顔を上げさせようとする。私は一物を口から吐き出す。一物からは糸が引いていて、私の口周りはべとべとに汚れていた。それを拭う気力すらない。ずっと一心に榎木津のを舐めていた所為で息が荒くなっていた。手は榎木津の陰茎を握ったままである。

「…な、何がですか」
「だから、鳥ちゃんにもこういう事をしてあげていたのか? と訊いている!」

 榎木津の物言いはムードもへったくれも無かった。何だか、私は微妙に肚が立ったようだ。
「――したこと、有りませんよ」

「ホントか?」
「本当です! こんなこと嘘ついてどうするんですか。只、必死というだけで…」
「必死? ああ、そういえば、昔関がこんなことしてくれたのは数える程だったか。しかも一番最初なんて泣きながら厭々やってくれた。僕は何時もしてあげてたっていうのにな…大人になったなぁ」
「当たり前ですよ。私を何歳だと思ってるんですか。もう学生じゃない。三十も過ぎてしまった」
「こんなこと、何でもないか。――関っ! なんでもないなら、やっぱり鳥ちゃんにしてあげてたんじゃないか!?」
「だから! 私が云いたいのは、榎さんが特別だって…」

 訳が分からないまま、喚いた言葉を途中で理解し口ごもった。恥ずかしくなったのだ。一体本日何度目の告白だろうか。こういう言葉は、安売りするものではないというのに。

「――ほぉ…。舐めるのは大丈夫になったというのに、言葉は恥ずかしいのか。恥ずかしがらずに、もっと僕を好きだ特別だと云いなさい。バチは当たらないぞ」

 榎木津は鳥口のことはどうでも良くなったのかそう云うと、榎木津の足の間に跪いている私の腕を取り、ソファの上に引き上げた。
 言葉で云っても足りない、しかも口で表現するのは恥ずかしいから体で表現する。それが私の必死の正体だというのに、榎木津は事も無いように、そう云う。下を向き、逡巡し、私を見詰めている榎木津を見る事が出来ない。

「今、云った方がいいんですか…」
「関が僕に云いたくなった時で良いけどね。どうせ、あと一時間中めいっぱい、関は僕の事を好きだと云うだろうさ」

 意味を理解して、顔を上げると榎木津は、にやっと笑っていた。榎木津の手が素早く私の股間を掠めて、指先が私の後孔の辺りを撫で出した。驚いて息が軽く詰まった。もう、体の感覚も戻ってきている。

「榎さ、ん。もうするのかい」
「うん、僕のほうはもういい。一刻も早く関に挿れたい。…残念そうだな」
「な、何が…」
「僕のは好きなんだね。バレバレだよ。――今度、一日中関の気が済むまでやってもらおう」
「酷い…」
「酷くない」

 大体嬉しそうな顔で酷いも無いだろう、と榎木津は付け加えて私に俯けになるように云うと、腰を引き上げて、四つん這いの体勢を強いた。ああ、見抜かれたなと思いながらされるがままだ。と、榎木津の気配が消えたと思ったら、すぐ戻ってきて、榎木津の手の感触と共に、臀部に何か冷たいものを感じた。

「――っ、な、なに」

 冷たいものを尻から谷間に掛けて、榎木津の手によって万遍なく伸ばされる。冷たさに自分の体を支える両腕が震えている。

「食用油だ。コレしかなかった」

 潤滑油か。以前は使った事が無いくせに。――ああ、そうか。榎木津の限界も近いのか。そう思い至ったら、嬉しくなった。

「時間も結構経っている。感覚も戻っているだろ。もう、遠慮はしない」

 言うが早いか、榎木津の指が油を伴って後孔に挿入された。中を縦横無尽に掻き回してくる。油を使っているので違和感はそれほどでも無いが、中を解しながらピンポイントで性感帯を指先で強く擦られると、体が跳ねて泣き叫びたくなる。早くも前が精を零しだした。喘ぎ声を呻き声に変えて、前を弄りだした榎木津の手や、後孔を探る指の動きに理性を失わない程度に堪える。腰が揺れて榎木津を誘う。また汗が体中に滲む。

 指の本数を増やされた。何本だろう。榎木津の指はそれぞれ別個の動きをし、抜き差しを繰り返している。随分、穴が広がった気がする。
 腕の力が抜けるが、時たま体は痙攣する。榎木津は間を持たせて私の性感帯を刺激しているようだ。だから、達することは無い。だが、もどかしい。
 とうとう腕の力が完全に抜けて、腰だけを突き出すような体勢になった。臀部から内腿に掛けて、食用油と体液でべとべとに汚れている。後ろの孔から、耳障りな、高ぶる、いやらしい音が流れてきて止まらない。

「僕の指を締めてる…」

 分かりきっている事を云わないで。恥ずかしくなって腰が揺れるから。榎木津が穴から指を抜き去った。口寂しく、ひくついて涎を垂らす口。私は切なくて、涙を流す。

 もう、隙間無く、穴を埋めてくれ。堪えられない。

 掠れた声で榎木津の名を呼んでいた。榎木津の息遣いが耳元でして、下の口に熱い物が押し当てられたと思ったら一息に貫かれて悲鳴をあげ、榎木津の動きに縋り付くように律動し始めた。

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